事業が動き始める前からお金はかかる…「開業費」との上手な付き合い方

事業が動き始める前からお金はかかる…「開業費」との上手な付き合い方

目次

  1. 1.どこまでが開業費として扱える?
  2. 2.開業費・創立費は「繰延資産」として後から勘定!
  3. 3.「会社法(会計)上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」とは?
  4. 4.繰延資産ごとの償却の期限
    1. 「会社法(会計)上の繰延資産」の償却期限について
    2. 「税法上の繰延資産」の償却期限について
  5. おわりに

開業費とは、開業準備のために支出する費用のことです。創立費とは、法人を設立するために支出する費用を指します。これらは繰延資産として、任意のタイミングで経費として形状することができます。こちらの記事では、開業を目前にしている経営者の方へ向けて、開業費と創立費についてご紹介します。開業にあたって、事業が動き始める前にかかるさまざまな費用と、上手に付き合っていきましょう。

1.どこまでが開業費として扱える?

事業を始めるにあたり必要となる費用は、「開業費」と「創立費」という2種類の費用に分けて考えることができます。それぞれの範囲を理解して、これからの開業にお役立てください。

そもそも「開業費」とは、法人を設立してから営業活動を始めるまでの期間に、開業準備として支出する費用のことを指します。つまり、法人の設立後で、かつ実際に営業を始めるまでの間に必要となった費用であれば、開業費として扱えるというわけです。

それに対して「創立費」とは、法人を設立するために通常必要となる費用のことを指します。創立費として扱われるのは、あくまで会社の設立の時点で手続きなどのためにかかった費用や、各種手数料のみということになります。

つまり、創立費として扱えるものよりも、開業費として扱えるものの方が範囲は広いということです。たとえば、会社の印鑑や社員の名刺、あるいはパンフレットや資料の作成にかかった費用も、開業費として扱えます。打ち合わせのための接待費も、開業費の範囲です。

参考

http://www.ide-tax.com/column/2014/369/

2.開業費・創立費は「繰延資産」として後から勘定!

開業から営業までの期間にかかった開業費や、法人の設立のためにかかった創立費は、「繰延資産」として扱うことができます。

繰延資産とは、支出による効果が1年以上という長期にわたって続く費用のことです。したがって、通常通り1年間でまとめて費用として計上するのではなく、一旦は資産として計上するとともに、償却期間にもとづいて計上していくことになります。

このような繰延資産に含まれるのは、「開業費」「創立費」「開発費」「株式交付費」「社債発行費」の5つとなっています。開業費と創立費は、繰延資産として後から勘定できるということを頭に入れておきましょう。

参考

https://96-5.co/Sov

3.「会社法(会計)上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」とは?

繰延資産には、「会社法(会計)上の繰延資産」と「税法上の繰延資産」があります。会社法上の繰延資産が任意のタイミングで経費として計上できるのに対して、税法上の繰延資産には償却の期限が定められています。

まず、先程述べた開業費・創立費・開発費・株式交付費・社債発行費という5つの費用は、会社法(会計)上の繰延資産とされています。

それに対して、開業をするために借りた物件の礼金や立退料、あるいは広告のために設置した看板の費用など、その他のものは税法上の繰延資産にあたります。

なお、会社法上では”物件の礼金”という費用は、繰延資産に相当しません。したがって、これらの税法上の繰延資産は「長期前払費用」として処理されることになります。

いずれの繰延資産も、支出効果が1年以上にわたって続くという点では共通しています。開業費や創立費は、会社法上の繰延資産に相当するものであると覚えておきましょう。

参考

http://satoscpa.com/kuri

http://www.hinokami.co.jp/houjin/20131125/

http://www.yfp.jp/mt-archive/2008/02/post_381.html

4.繰延資産ごとの償却の期限

最後に、繰延資産ごとの償却期限についてご紹介します。

「会社法(会計)上の繰延資産」の償却期限について

開業費・創立費・開発費・株式交付費・社債発行費を含む5つの繰延資産の償却期限は、任意となっています。つまり、いつでも自分で金額を指定して経費として計上できるということです。

「税法上の繰延資産」の償却期限について

税法上の繰延資産は、償却期限が定められています。ただし、20万円未満であれば、支出が発生した年度にすべてを経費として計上できます。税法上の繰延資産は定額法で経費にするとともに、計上するためには「繰延資産の償却額の計算に関する明細書」という書類が必要です。

償却期限の一例は、下記の通りです。

  • 資産を賃借するための権利金等:5年(例 礼金・立退料・更新料など)
  • 広告宣伝の用に供する資産を贈与したことにより生ずる費用:耐用年数の10分の7年(例 広告のための看板・ネオンサイン・自動車など)
  • 共同的施設の設置又は改良のために支出する費用:自己利用が中心の公共的施設の場合は10分の7年(例 街灯・アーケードなど)
  • スキー場のゲレンデ整備費用:5年

参考

http://satoscpa.com/kuri

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/renketsu/07/07_01.htm

おわりに

事業を始めるにあたって必要となる開業費と創立費は、「会社法(会計)上の繰延資産」にあたるため繰延資産として任意のタイミングで経費として形状することができます。それに対して、「税法上の繰延資産」にあたるものは、それぞれ償却期限が定められています。このように、開業にともなって事業が始まる前から発生する費用について、しっかりと管理しておくようにしましょう。

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