新規事業が失敗する5つの要因と成功へ導く6つのカギ!事例で解説
目次
新規事業が失敗する確率は高い
特に新しい分野に挑戦する新規事業の場合は、どうしても失敗してしまう確率が高くなる傾向にあります。
大企業に比べると、中小企業が新規事業を成功させるハードルは高くなるでしょう。ビジネスにおいて新規事業で安定的に売上を上げることや、経常利益率を高くすることの難しさを、正しく把握しておく必要があります。
大企業に比べて中小企業は失敗しやすい
企業の規模に注目してみると、大企業に比べて中小企業のほうが新規事業に失敗しやすいといわれています。その理由として、中小企業は大企業のような十分な資金や人材、ノウハウを保持していないケースが多いからです。
しかし、中小企業だから新規事業を諦めなければならないわけではありません。中小企業の中でも、新しい分野に積極的に挑戦している企業は、利益率が増加傾向にあるのも事実です。リスクを把握したうえで、しっかりと準備を行い新規事業に取り組むようにしましょう。
近年の新規事業の傾向
近年の新規事業へのアプローチには、次の5つの傾向があります。ただでさえハイリスクな新規事業への挑戦、他の企業がどんな形で新しい事業に取り組んでいるかを知っておきましょう。
- 保有している顧客データを活用
- オープンイノベーションで柔軟にリソースを確保
- 現代社会が抱えている問題に沿った解決案を提案
- 上手くいっている既存事業のビジネスモデルを転換
- コア技術を活用し、関連分野へ転用
新規事業の展開方法は、すでに自社がもっているリソース(人材や物資、資金などの資源)を利用した方法と、保有しているリソースにはこだわらず新たな分野に挑戦する方法に分けられます。検討を進める際には、自社のリソースを利用するほうが、メンバーが前提知識を持ってスタートできるため、スムーズに進むでしょう。
一方で、既存リソースに関係なく全く新しい事業をスタートする場合は、さまざまなアイデアが飛び出し、企画の自由度が高いのが特徴です。
近年の新規事業の事例として、製造メーカーが全く新しい分野の事業に進出するケースや、資金調達にクラウドファンディングを活用するケースが増えています。
新規事業が失敗する5つの要因
企業が多方向からのアプローチを試みたとしても、新規事業の失敗率が依然として高いのは事実です。新規事業の失敗につながってしまう、5つの要因をご紹介します。
- 事前調査が十分でない
- 新しいやり方を取り入れられない
- ノウハウを持った人材が不足している
- 資金が足りない
- スピード感がない
いくつかの要因が関係しあって、新規事業が上手くいかない場合もあるでしょう。失敗の要因を事前に把握し、自社の新規事業の展開に活かしてみてください。
1.事前調査が十分でない
必要とされる情報の収集を怠ってしまうと、新規事業が失敗してしまう原因になります。
少なくとも、次のポイントをしっかりと検討したうえで、プロジェクトを進めてみてください。
- 市場規模やトレンド
- 顧客のニーズ
- 需要の見込める価格帯
- 効果的な販促方法
- 競合製品の価格やコンセプト
どれだけ事前に情報を集められたかで、新規事業の成功率が変わってきます。まずは市場規模やトレンドを調査し、顧客のニーズを掴むのが大切です。
ニーズを満たす企画ができたら、需要の見込める価格や、効果を出せる販促方法を検討しましょう。具体的な施策を進める中で、競合製品の情報も重要になってきます。
2.新しいやり方を取り入れられない
新規事業に適した新しいやり方を取り入れられないために、これまでの前提を無理に当てはめて失敗するケースがあります。特に大企業は、過去の成功パターンを引きずってしまいがちです。
新しい分野で成功を望むのであれば、その分画期的なアイデアとやり方が必要になるのです。これまでのやり方に固執してしまう企業であるほど、新たな施策が求められる新規事業に苦戦してしまうでしょう。
3.ノウハウを持った人材が不足している
新規事業に必要なノウハウを持った人材が不足している場合も、成功の確率が下がってしまいます。自社の既存リソースを使った新規事業を展開する場合は、ある程度の基礎が固まっている状態で始められるため、大きな心配はいらないでしょう。
しかし、全く新しい分野に挑戦する際には、IT知識や分析力、思考力、マーケティング知識などの詳しい知識を持った人材が不足する可能性が高くなります。新しく人員を補充するか、社員教育で知識の底上げをするなどして、新規事業成功に必要な能力を確保するのが重要です。
各分野の知識人を集めてプロジェクトチームを組み、力を補い合いながら上手く新規事業を進めていく必要があります。チームとしてのコミュニケーション能力も求められるでしょう。
4.資金が足りない
資金が足りない状況では、新規事業の大きな足かせとなってしまいます。新しい分野に挑戦する場合、事業スタート当初に思うような利益を上げられない可能性が高いです。
一般的に企業活動では、事前に組まれた予算を元に活動を続けていきます。既存事業の場合は大きな問題はありませんが、新規事業の場合は経費面の不確定要素が多いのがデメリットです。
思ったよりも資金がかかってしまったことで、方向性の修正や代替案の用意が早急に必要となることがあります。機転の利いた資金対応ができないと、その時点で新規事業が失敗してしまう可能性があるでしょう。
5.スピード感がない
スピード感がない取り組みは、新規事業の失敗を招きます。新しいアイデアは、どこよりも早く発表しなければ、その効果を最大限発揮できなくなってしまいます。
同じアイデアを持ったライバル企業もいると考えられるため、スピード感のある事業展開が求められるのです。特に大企業の場合は、予算や計画を決定する際の社内稟議に、時間がかかりすぎてしまう可能性も否定できません。
また、テンポよく事業が進まないとメンバーのモチベーションが下がってしまうことも懸念されます。決断すべきポイントでは迅速な判断をし、スピード感を意識したプロジェクトの進行を心掛けましょう。
新規事業が失敗に終わった事例
失敗が多いとされる新規事業ですが、実際の事例を知ることで学べることも多いはずです。ここでは、残念ながら新規事業が失敗してしまった3つの事例をご紹介します。
- 準備不足が招いた失敗事例
- 顧客ニーズの調査不足が招いた失敗事例
- セキュリティの甘さが招いた失敗事例
自社の状況と照らし合わせながら、失敗の原因を確認してみてください。
準備不足が招いた失敗事例
スピード感を重視するあまり、準備不足のまま製品をリリースしてしまった事例をご紹介します。事業の展開スピードが早いことは、他社との差別化やモチベーションの維持に有効ですが、事業自体の準備が甘い状態では逆効果です。
A社はスケジュールに間に合わせることを優先し、市場調査が十分でない状態で商品を発売してしまいました。結果、思ったように売り上げが伸びず、苦戦を強いられます。
さらには、事前の調査不足が尾を引き、現状を打破するアイデアを思いつくこともできませんでした。ニーズに合った改良をするためには、基礎となる市場やターゲットの情報が欠かせません。
スピードと入念な準備という相反する概念ですが、どちらもバランスよく進めるのが成功の秘訣です。
顧客ニーズの調査不足が招いた失敗事例
業界大手のB社は、20~30代の若い新規ユーザー獲得を目指して、定期的な課金でサービスを提供するサブスクリプション事業をスタートさせます。
事業開始当初からマーケットの反応は良く、好調にサービスを運用していましたが、そこには大きな問題がありました。実は、利用者の多くはB社のメイン層である40代で、ターゲットとして掲げていた新規層ではなかったのです。
そのため、既存のビジネスとの共食い状態に陥り、運用コストを抑えられなかったことも影響してサービス停止に追い込まれました。
事業自体は成功したように見えても、思ったような形でサービスが利用されなければ、結果的に失敗につながることを示す事例です。
セキュリティの甘さが招いた失敗事例
政府の方針に則り開始した、電子決済事業が失敗に終わってしまった事例です。お金というセンシティブな分野では、セキュリティへの対策が欠かせません。
しかし、C社の電子決済サービスは、わずか数日間の間に被害者数900人、被害総額約5,500万円のトラブルを起こしてしまったのです。原因は不正アクセスなどで、サービス開始から1ヶ月で廃止に追い込まれてしまいました。
C社の敗因は、タイトなスケジュールと専門知識を持った人材の不足であったとされています。セキュリティ面の問題は、その後の会社の信用にも影響を与える部分です。
より一層慎重になって、プロジェクトの検討・提供を進める必要があるでしょう。
新規事業を成功に導く6つのカギ
最後に、新規事業の成功に必要な6つのポイントをご紹介します。
- 明確な目的を設定する
- こまめに仮説検証を行う
- 余裕を持った予算計画を立てる
- 参加メンバーのモチベーションを維持する
- 外注を上手く利用する
- 前もって引き際を考えておく
どの要素が欠けても、新規事業の成功が難しくなってしまうでしょう。各ポイントを詳しく解説します。
1.明確な目標を設定する
新規事業をスタートさせる際には、明確な目標を設定する必要があります。掲げる目標が明確でないと、新規事業をスムーズに進めることが難しいからです。
特に新規事業には、上層部からプロジェクトのメンバーまで、一貫した目的・目標を共有できる組織作りが重要になります。
目標を明確化するには、ビジネスアイデアやコンセプトを可視化することが重要です。例えば「これまでにない時計を売り出す!」という目標の場合、どこが既存品と差別化できるポイントなのか、「これまでにない」の定義は何かという詳細まで突き詰める必要があります。
マーケティングのフレームワークも利用しながら、プロジェクトに関わるメンバーが同じ意識を持って事業に取り組める基礎作りをしてみてください。
【明確な目標の設定に使えるフレームワーク例】
- 3C分析:「顧客・競合他社・自社」の観点からビジネスプランを策定
- SWOT分析:事業の「強み・弱み・機会・脅威」を挙げて内部・外部環境を分析
- ポジショニングマップ:コストと性能など、2つの軸で自社と他社の製品を分析
これらのフレームワークを上手く活用すれば、新規事業における明確な目標が設定できます。
2.こまめに仮説検証を行う
プロジェクトを進める中でこまめに仮説検証を行い、より良いアイデアが出てくれば臨機応変に方向修正をするのが、新規事業を成功させるポイントです。
新規事業の開始当初は、さまざまな可能性を考え仮説を立て、検証を重ねていきます。市場の状況は常に変化するため、当初の仮説がサービスをリリースする時まで通用するとは限りません。
一度立てた仮説に甘んじず、定期的に振り返って検討する機会を持つようにしましょう。
3.余裕を持った予算計画を立てる
新規事業を成功させるためには、余裕を持った予算計画を立てる必要があります。新規事業では資金調達をしたり他事業の利益を投入したりする場合が多く、途中で新規事業への資金投入ができなくなり、結果的に頓挫するケースがあるためです。
プロジェクトを進めるうちに思いもよらず高額な費用がかかる場合も考えられます。資金不足が原因で撤退する事案も多いことから、余裕を持った予算計画であれば、新規事業を成功に導けるでしょう。
4.参加メンバーのモチベーションを維持する
参加メンバーのモチベーションを維持するのも、新規事業を成功させる1つのカギです。新しく挑戦するプロジェクトだからこそ、思い通りに進まなかったり、計画の見直しが必要になったりするシーンが多くなります。
思ったような成果が出ない状況が続く中で、どれだけチームが一丸となって諦めず進んでいけるかが重要なのです。そのためには、一人ひとりのモチベーションが事業の成功にどんな影響を与えるかを、日頃から認識しておく必要があります。
5.外注を上手く利用する
外注を上手く利用すれば、社内の負担を軽減でき、事業のスピードアップを図るのにも効果的です。例えば、初期段階の市場調査やマーケティングデータの収集は、その分野に詳しい人材が居ないと難しい場合が多いでしょう。
そこで、専門的な調査会社に依頼をすれば、求めているデータを効率的に集められます。社内で全てを対応する必要がなくなるうえに、専門的なノウハウを得ることもできるでしょう。
6.前もって引き際を考えておく
失敗する確率が高いとされる新規事業だからこそ、前もって引き際を決めておくのも手です。トラブルや失敗は新規事業には欠かせない要素だとはいっても、引き際の考えなしに事業を続けてしまうと、会社にとって大きなマイナスとなりかねません。
特にこれまで新規事業に多くの投資をしてきた場合、もったいないという心理からなかなか撤退を決められないケースも多いでしょう。事業が苦しくなってきた時に判断をするのは、簡単ではありません。
そこで、事前に引き際を設定しておけば、最悪のケースを避けることができるのです。
新規事業失敗を避けるために対策を取ろう!
新規事業は新しい道を開拓していかなければならないため、失敗率が高くなるのは事実です。しかし、さまざまな分野で挑戦を続けている企業は、結果的に売上を伸ばしているという結果も出ています。
企業を大きく成長させるきっかけとなる新規事業への挑戦は、その難しさをしっかりと認識したうえで対策を取る必要があるでしょう。
ご紹介した成功に導く6つのカギも参考にしながら、自社に合った新規事業の進め方を検討してみてください。
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