新規事業を立ち上げる必要性がある理由とメリット、タイミングを解説
目次
新規事業の必要性はどう変化しているのか?
近年、新規事業立ち上げの必要性が増しています。
企業活動を安定的に持続させるための手段でもある新規事業は「求められるビジネスモデルや市場環境」が大きく変化するタイミング、特にその必要性が高まると考えられます。
まずは今、新規事業が求められている理由を時代背景も交えて解説します。
VUCA時代到来で必要性が上昇
VUCA時代が到来して、新規事業を立ち上げる必要性が上昇しています。VUCAとはVolatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)という4つの単語の頭文字を取った略語です。
VUCA時代とは変化の幅が大きく、予測が困難で、複雑さと曖昧さが増している時代といえます。将来の予測が難しい時代が到来したことにより、これまで好調であった既存の事業であっても見通しが不透明性となりました。
経営を安定させるためにも、企業は積極的に新たな事業の創出に取り組む必要性が出てきました。反対に変化が激しいということは、ビジネスチャンスが広がるという見方もできます。
ただし、VUCA時代に新事業を成功させるのは簡単ではありません。失敗する確率が高くなることも認識しておく必要があります。
人々のライフスタイルや価値観の変化に伴い必要性が上昇
VUCA時代の到来は、人々のライフスタイルや価値観を大きく変化させました。求めるものが変われば 市場環境も一変します。これまで成功してきたビジネスモデルが通用しないという状況が出てくる中で、新規事業を立ち上げる必要性が高まっています。
オンラインへの移行が進行し、医療やヘルスケアへの注目が高まり、働き方も変化してきました。こうした変化が新たな需要をもたらすと考えられるでしょう。つまり、新規事業を行う絶好の機会とも言えるのです。
新たな社会では新たな需要が生まれることを念頭に置いて、新規事業の立ち上げを検討するといいでしょう。
新規事業の必要性がある4つの理由
変化が激しく、予測が難しい時代だからこそ、既存の事業をしっかり展開して経営を安定すべきではないかという考え方もあるでしょう。確かに、新規事業を成功させるのは簡単ではありません。それでもなお、新規事業を立ち上げる必要があります。
主な理由は以下の4つです。
- 既存事業はやがて衰退期に入る
- 国内市場は縮小している
- オープンイノベーションが進行している
- 組織はマンネリ化しやすい
それぞれ詳しく解説しましょう。
1.既存事業はやがて衰退期に入る
新規事業を立ち上げる必要があるのは、既存事業がやがて衰退期に入るからです。「プロダクト・ライフ・サイクル」という言葉があるように、製品やサービスには「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」という4段階があり、変化しない商品には寿命があります。
既存の製品やサービスを提供している企業にも、同じように寿命があると言えるでしょう。どんなに好調な企業でも既存の事業に依存し続けると、やがては衰退期に入り、消えていく運命が待っています。
長期的な視野に立った場合には、既存事業を守っていくだけでは、現状を維持することはできません。既存事業はやがて衰退期に入ることを念頭において、経営戦略を練る必要があります。
2.国内市場は縮小している
少子高齢化が進行しているため、国内市場は確実に縮小し続けています。高齢者を対象とした商品やサービスを提供することで、例外的に拡大している業界もありますが、やがて縮小の方向に向かうのはほぼ間違いないといえます。
市場縮小という状況があるからこそ、攻めの経営姿勢が必要になります。新しい価値を生み出す、これまでになかった付加価値を付ける、海外市場の開拓を視野に入れるなど、商品やサービスを積極的に開拓して、新規事業を創出する必要性が高まっているのです。
3.オープンイノベーションが進行している
オープンイノベーションが進行していることも、新規事業の必要性が高まっている理由の1つと言えるでしょう。オープンイノベーションとは、自社以外の組織が持っている知識や技術を取り込み、連携して新しい価値を創出することです。
近年、行政もオープンイノベーションを推進しており、さまざまな企業のオープンイノベーションへの参画が増加しています。特に目立っているのはスタートアップとの協業でしょう。
スタートアップの革新的な技術や斬新な発想を活用することで、新規事業の可能性が広がることが期待できます。IT関連での技術革新が進んでおり、新規事業を展開するうえで、オープンイノベーションを活用することはきわめて有効な手段です。
4.組織はマンネリ化しやすい
組織がマンネリ化しやすいことも、新規事業を立ち上げる理由の1つです。企業が好調な時ほど、組織が硬直化してマンネリ化が起こりやすくなります。チャレンジする姿勢がなくなる、新しい発想が生まれなくなるなどの弊害が生じる可能性が高まるのです。
保守的な組織の多くはやがて衰退してしまうでしょう。新規事業を立ち上げることで、マンネリ化を防ぎ、組織に活力を与えることが期待できます。経営が順調にいっている時こそ、新たな分野、新しい事業へと打って出るタイミングと言えるでしょう。
新規事業立ち上げの5つのメリット
新規事業を立ち上げるメリットは数多くあります。リスク管理、収益の確保、人材育成、企業イメージ、組織のあり方など、さまざまな観点において、プラスの効果が期待できるからです。主なメリットは以下の5つです。
- 経営リスクの分散
- 新たな収益源の開拓
- 人材の育成
- 企業イメージの向上
- 組織の活性化
それぞれ詳しく解説します。
1.経営リスクの分散
新規事業を立ち上げるメリットの中でも特に効果が大きいのは、経営リスクの分散です。企業が展開する事業の数が増えることにより、経営の安定化が期待できます。
1つの事業の収益力が低下したとしても、新たに立ち上げた事業が成長して収益を生むことにより、マイナスを補うことが期待できるからです。
前述したように、企業には「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」があります。新規事業を立ち上げて、さまざまなフェーズの事業を同時に展開することにより、効果的に経営リスクを分散できるでしょう。
2.新たな収益源の開拓
経営リスクの分散とも関連するメリットとして、新たな収益源の開拓があります。単純に収益源が増えることは、企業の収益の増加にもつながるでしょう。増えた利益を経営資源への投入、新たな事業への投資に回すことにより、さらなる企業の発展も期待できます。
新たな収益源を開拓するためには、これまでとは違った発想やアイデアを持ってビジネスを展開する必要があるでしょう。開拓という言葉は新規事業を展開するうえでの重要なキーワードの1つです。
開拓という意識を持つことが、企業の成長の好循環をもたらす第一歩と言えるでしょう。
3.人材の育成
新規事業を立ち上げることにより、人材の育成を促進することが期待できます。既存の事業では当然のことながら、役職やポストが埋まっているのが通常の状態です。新規事業を立ち上げることになると、新たに役職やポストを担う人材が必要になります。
新規事業ならば既存の事業とは違う大胆な人材の抜擢、柔軟な人員の配置も可能になるでしょう。新規事業を成功させるためには、既存事業を維持する場合とは違う能力が求められます。
環境が変わることで、これまではさほど活躍していなかった社員の才能が一気に開花するケースもあります。ポストが人を育てるという言葉があるように、新規事業は人材育成のかっこうの場にもなるでしょう。
新規事業の立ち上げは、多くの面で起業することと共通点があります。新たな価値を創出する必要があるからです。新規事業によって、未来の経営者、後継者を育てる効果も期待できるでしょう。
4.企業イメージの向上
新規事業を積極的に展開している企業は、顧客やステークホルダーなどの外部から見ても魅力的に見えるでしょう。つまり企業イメージの向上というメリットも考えられるのです。
イメージ向上は企業が展開している既存の事業にとってもプラスになる場合もあるでしょう。また、人材の採用面でも有利に働くと考えられます。就職先を探している人材が会社選びをする際に、将来性ややりがいを考慮すると考えられるからです。
新規事業を展開することは、外部に対して企業の姿勢を発信することでもあるでしょう。
5.組織の活性化
人材育成や人材採用の面でのメリットも期待できると説明してきました。より大きな視点から見ると、新規事業を立ち上げることは、組織全体の活性化につながることが期待できます。固定していたポストが流動化し、新たな才能が発掘されることもあるからです。
新規事業の立ち上げは、企業のビジョンや戦略の活性化にもつながるでしょう。社内全体でそのビジョンを共有することによって、組織全体としても活性化を図ることができます。
新規事業の提案を奨励することにより、チャレンジする風土、チャレンジする人を応援する風土を定着させることにも期待できるでしょう。
新規事業を立ち上げるべき2つのタイミング
新規事業を立ち上げても、うまくいかないというケースは少なくありません。どんな事業を展開するのかということも重要ですが、タイミングも重要です。
企業を設立してすぐに新規事業を立ち上げるのはリスクが大きすぎます。創業期は基本的には避けたほうがいいでしょう。立ち上げのタイミングとして適しているのは、企業の成長期と成熟期の2つです。それぞれの時期について、詳しく説明します。
1.企業の成長期
新規事業を立ち上げるタイミングとして特に適しているのは、企業の成長期です。成長期とは既存の事業が軌道に乗り、余力が生まれてきた時期ということになるでしょう。新規事業を起こすには、ヒト・モノ・カネといった経営資源を投入することになります。
新規事業に回せる経営資源を確保できた時期が、良いタイミングと言えるでしょう。もしも、新規事業がうまくいかなった場合でも、企業を持続できる体力があるかどうかの見極めも、タイミングを決定するうえで重要です。
2.企業の成熟期
企業の成熟期も新規事業を立ち上げるタイミングとして適しています。成熟期には新たな事業に投資するだけの十分な企業体力があり、事業がうまくいかなかった場合にも、損失を補填することができるからです。
ポイントになるのは、企業が成熟期にあるかどうかの見極めでしょう。成長期から成熟期への移行期間であれば、問題はありません。しかし、成熟期から衰退期への移行期間である場合には、タイミングとして遅すぎるケースも出てくるでしょう。
衰退期に入っている場合には、新規事業の失敗が衰退に拍車をかけることにつながりかねないからです。新規事業に挑戦するタイミングが遅すぎると、企業にとって致命傷になりかねないため、早めの決断が求められます。
新規事業立ち上げの3つの注意点
新規事業を立ち上げて成功させるのは、簡単なことではありません。企業の現状、市場の動向、新規事業の方向性など、さまざまな条件を考慮する必要があります。特にポイントとなるのは、以下の3つの注意点です。
- 既存事業とのシナジー効果はあるか?
- 新規事業に投入できるリソースはあるか?
- 撤退の基準は定めてあるか?
それぞれの確認ポイントを詳しく解説します。
1.既存事業とのシナジー効果はあるか?
新規事業を立ち上げる際には、既存事業とのシナジー効果があるかどうかを確認する必要があります。特に避けるべきなのは、既存事業と競合してしまうケースやマイナスになってしまうケースです。既存事業の足を引っ張ることだけは避けなければなりません。
既存事業とのシナジー効果がある場合には、新規事業を立ち上げるメリットが大きくなることが期待できるでしょう。シナジー効果は多岐にわたっています。具体的には事業モデル、販売ルート、商品やサービス、地域、人材、組織のハード面、ビジョン、企業文化などです。
これらの面でシナジー効果が期待できる事業を展開する場合には、成功する確率を高めることが期待できるでしょう。
シナジー効果の有無を確認するためには、まず自社の現状や既存事業の状況を客観的に分析する必要があります。その際に特に重視すべきなのは、強み・課題・独自性などです。
新規事業が自社の強みや独自性を活かせる事業であるならば、シナジー効果を期待できるでしょう。また、自社の既存事業の課題を解消できる事業であるならば、同様にシナジー効果を期待できる場合があります。
シナジー効果は市場の状況にも影響を受けるものです。市場の変化、業界の動向の変化、競合の変化など、正しく認識する必要があります。新規事業のシナジー効果を見極めるためには、自社に対する客観的な分析と現状に対する的確な認識が必要です。
2.新規事業に投入できるリソースはあるか?
新規事業を検討する場合に、投入できるリソースがあるかどうかを確認することが重要なポイントになります。リソースとはヒト・モノ・カネです。
ヒトというのは、人数だけの問題ではありません。新規事業を行う場合には、既存のルールやマニュアルは通用しません。リーダーシップを持っている、チャレンジ精神を備えている、柔軟な発想ができるなどの資質が必要になります。
適切な人材を投入できるかどうかが、新規事業の大きな鍵を握っているのです。ヒトというリソースは、社内だけのものではありません。場合によっては社外から補充することもできるでしょう。
また、社外に新規事業に協力してくれる人がいることや、新規事業に理解を示してくれる顧客やステークホルダーの存在も重要です。
モノとはオフィス・インフラ・ソフトウェア・設備などを表しています。既存の事業で使用しているモノを活用できるのか、新たに追加すべきモノはなんなのか、確認する必要があるでしょう。
カネとは新規事業に投資する資金です。会社の資産と借入可能な金額、外部からの投資を合わせたものがカネと考えます。どれくらいのカネを投入できるかによって、新規事業の規模が決まるでしょう。
3.撤退の基準は定めてあるか?
新規事業をスタートする前に、徹底の基準を定めておくことが必要です。当初の計画どおりにいかなかった場合に、ずるずると事業を継続して、赤字が拡大してしまい、企業の存続そのものが危ぶまれる事態になることは避けなければなりません。
新規事業の計画を立てる段階で撤退の基準を明確にしておくことで、失敗した場合の被害を少なく抑えることができます。
撤退の基準は、新規事業に失敗しても本体の企業の余力が残っている状態に設定するといいでしょう。主観的な判断にならないように、具体的な数値を撤退基準として設定するのがポイントです。
新規事業の立ち上げが企業を成長させる
企業活動を長期的に持続していくためには、新規事業の立ち上げが不可欠の要素になります。商品やサービスには「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」があり、寿命があるからです。
事業が好調でリソースが十分にあるタイミングで、新規事業を検討するといいでしょう。新規事業の立ち上げには、さまざまなメリットがあります。
経営リスクの分散、新たな収益源の開拓といったメリットに加えて、人材の育成、企業イメージの向上、組織の活性化などの効果も期待できるでしょう。つまり新規事業を立ち上げることが企業を成長させるのです。
自社の状況を的確に分析し、既存事業とのシナジー効果も念頭に置いて、新規事業を起こすことを検討してください。
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