開業費・創立費などの繰延資産を「任意償却」することの意味

開業費・創立費などの繰延資産を「任意償却」することの意味

目次

  1. 繰延資産は何年以内に償却すべき?
  2. 設立前にかかったお金も経費にできる!
    1. 創立費の任意償却で節税も
  3. 繰延資産は利益が出た時の税金対策に使える
    1. 繰延資産は、均等償却せず任意償却で
  4. 制度を生かすには、準備段階から開業にまつわる支出の把握を

会社の設立、あるいは事務所の立ち上げには、さまざまな費用がかかります。そんな起業スタートに欠かせない繰延資産は、任意償却することで大きな節税効果を生み出します。今回は、税務上の任意償却のルール、そのメリットに加え、会社設立に必要な費用の種類についても詳しくお伝えします。

繰延資産は何年以内に償却すべき?

繰延資産とは、必要経費が翌年度以降も負担となる場合、当期だけの負担とせず、一時的に繰り延べることが認められた資産です。必要経費の支出によって生まれる効果が来期まで及ぶことが期待され、その期間に配分される「償却」を生かした節税対策として注目されます。繰延資産の活用で効果が期待されるのは、主に法人税の減税です。

繰延資産の種類はさまざまで、会社法や税法によって償却のルールや期間が異なります。会社法上の繰延資産を対象とする任意償却は、好きなタイミングで好きな額を償却できる点が多き間メリットです。実質上、償却期間はないものと考えて良いでしょう。

ちなみに、会社法上の繰延資産に概要する経費には、以下のようなものがあります。

  • 創立費
  • 開業費
  • 新株発行費
  • 社債発行費

繰延資産には、税法特有のルールに従い行われるものもあります。税法特有の繰延資産の償却は、固定資産の耐用年数や契約期間を基準とする償却期間が定められます。繰延資産の償却期間は、会社法と税法で異なる点に注意してください。

設立前にかかったお金も経費にできる!

会社設立に要する費用を、「創立費」と言います。創立費に該当する具体的な項目は、「定款作成費」「株式募集のための広告費」「テナントの賃貸料」「設立事務における人件費」「金融機関の取り扱い手数料」「証券会社の取り扱い手数料」「設立登記の登録免許税」など。これらの費用は会社設立に欠かせない費用であるため、設立前に発生する支出となります。設立前にかかったこれらの費用も、経費として計上できます。

「創立費」に該当しない費用でも、会社設立に必要な経費と見なされ、事業支出として計上できるものもあります。

たとえば、取引先との会合に要した会議費などが開業前に行われたとしても、事業に関する支出であれば必要経費扱いとして認められます。ただし、「創立費」という名目でなく、別の項目の費用として計上する必要があります。

どれくらいのスパンが会社設立前の期間として扱われるかについて、一般的には3ヶ月程度と言われます。それ以前に支出した費用項目の場合は、会社設立のための費用として認められない可能性もあり、事前によく確認しておくことが重要です。

創立費の任意償却で節税も

創立費を、数年にわたって経費計上する償却で会計すれば、節税対策につながります。中小企業の場合は、税務のルールに則り、「好きな年度に好きな額だけ」費用計上する任意償却が認められます。そのため、多額の利益が見込めない事業年度は避け、増収増益のタイミングで費用化して節税につなげる事業者もいます。

繰延資産は利益が出た時の税金対策に使える

繰延資産は、好きな年度に好きな額を経費計上する任意償却を利用すれば、大きな節税効果になります。任意償却の経費として計上できるのは、先に挙げた創立費以外にも、開業費があります。

開業費とは、登記完了を経て本格的な事業活動をはじめるまでの期間に特別支出した費用のこと。たとえば、広告宣伝費や名刺作成費用などがそれです。個人事業主の場合は、創立費はかからず、開業費のみの設立費用となります。

繰延資産は、均等償却せず任意償却で

創立費や開業費などの設立準備のためのコストは、5年間のスパンで行う「均等償却」も可能です。しかし、節税を考えるなら好きなタイミングで費用計上できる任意償却がおすすめです。

開業に要する支出を繰延資産に組み込み、任意償却を選択すれば、開業後5年分の赤字は黒字化以降に計上。そうすれば大幅な節税が見込めます。開業準備の際は、この点もしっかり押さえておくようにしてください。

制度を生かすには、準備段階から開業にまつわる支出の把握を

任意償却の利点をしっかり生かすには、開業前からそのメリットを把握しておくことが大切です。事務所を立ち上げ、事業活動をスタートした後で節税対策を考えても、上手く利用できない怖れも出てきます。

事業を立ち上げる前に、開業費として認められる項目を事前チェックし、支払いの際は領収書などを必ず出してもらうようにしましょう。そして、それらは大切に保管してください。

開業準備に追われている状況の中で、なかなか節税対策まで頭が回らないかもしれません。創立費や開業費を適切処理し、任意償却の利用方法などを正確に理解するためにも、税理士への相談をおすすめします。専門家のアドバイスを受けておけば、設立費用に該当する項目の計上漏れを防ぐことができます。

事業活動のスタートを順調に切るためにも、開業前の準備に必要なことと、節税対策のポイントはしっかり押さえておきましょう。

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