居酒屋で徹底検証!飲食業の電気代と削減法
目次
飲食店を経営する場合、ランニングコストとして必要になる電気代は毎月いくらくらいかかるのでしょうか?飲食店もさまざまな形態がありますが、今回は居酒屋をモデルにしてシミュレーションをし、検証していきます。
飲食業で電気代を節約できるポイントについてもご紹介しますので、経営者の方は是非ご参考ください。
居酒屋の消費電力はどうやって見る?
まずは居酒屋の電気の消費量がどのくらいなのかを検証していきましょう。経済産業省が算出した「一般飲食店における省エネルギー実施要領」によれば、延べ床面積366平方メートル、年間営業時間が約3,300時間の居酒屋で1年間に使った量は277,799kWhです。
年中無休とすると1日の営業時間は9時間です。12カ月で割り、1か月で使った量を算出してみると約23,150kWhになります。
電気の消費先別でみていきましょう。一番エネルギーを消費しているのは厨房機器で約40%、照明が約30%、空調が約20%となります。こちらの参考例では、調理にはガスも使用しているため、厨房がオール電化の場合はさらに使っている電気の使用量が増えます。
夏のピーク日の電力使用量
同じく経済産業省のデータを参考に、夏季に電気を使う量をみていきましょう。年間で気温が最も高くなる夏は、空調のエネルギー消費量が上がります。居酒屋が営業するのは夜間ですが、特に8月は夜も気温が下がらず、エアコンを効かせる必要があります。
東京で最高気温37.1℃を観測した、2016年8月9日の気温をチェックしてみましょう。
最高気温を観測したのは13時です。18時の時点でも34.0℃あり、その後も30℃以上の気温が続きます。30℃を下回ったのは24時でした。暑い中お越しいただいたお客様のため、エアコンをフル回転させなければなりません。
また、居酒屋の厨房では揚げ物など火を使った調理が欠かせません。従業員の熱中症予防の観点からも、厨房内もエアコンをつけて室温を下げることが求められます。
経済産業省のデータによれば、8月の電力使用状況は合計で約30,000kWhです。エネルギーの消費先別でみてみると、通年のデータとは違い、最も電気を使用しているのは空調で39%、次いで厨房機器で36%となっています。夏は厨房機器よりも空調に、多くのエネルギーが必要となるのです。
居酒屋の冷房のエネルギー消費とは
居酒屋など広い空間を持つお店では、馬力がある業務用エアコンを設置するのが一般的です。では、居酒屋は業務用エアコンが何台ほど必要で、どれくらいの電力を消費するのか試算してみましょう。
経済産業省の例では、店舗の広さは366平方メートルです。業務用エアコンは1.5馬力から10馬力まであります。馬力を増やすことでより広範囲を冷やすことが可能です。しかし、あまり広範囲すぎると温度調節が難しいため、今回は2馬力の業務用エアコンで台数と消費電力を計算していくことにします。
2馬力の業務用エアコンでカバーできる目安は、飲食店の場合14~22平方メートルです。20平方メートルで計算すると、366平方メートルの居酒屋1軒に必要な業務用エアコンの台数は約18台となります。
2馬力の業務用エアコンの冷暖房能力をkWhで示すと、5.0kWhとなります。営業時間前から店内にエアコンを入れ、温度調節をしたと仮定して、一日10時間18台の業務用エアコンを稼働させたときに消費するエネルギー量は900kWhです。
ただし、メーカーによって空調機の実際に消費するエネルギーが違います。また、外気温によって必要なエネルギー量が大きく変わることがあるので、先ほどお伝えした数値はあくまでご参考にしてください。
冬のピーク日の電力使用量
冬のピーク日のエネルギー使用量についてみていきましょう。冬も夏と同様に、空調管理のために多くの電力が必要になります。夏の冷房とは違い、暖房器具にはガス、石油ファンヒーター、エアコンなど様々な選択肢があります。しかし、居酒屋でお客様を迎える場合、安全面などを考慮するとエアコンによる暖房を使うのが一般的です。
寒い中を歩いてきたお客様にとって、寒い店内は快適とはいえません。なるべく暖房を効かせて心地良い空間を提供出来なければ、お客様を逃すことにつながります。そのため、多くの電力をエアコンに使わなければならないのです。
経済産業省のデータによれば、冬季に使う電気の量は、12月1ヶ月で約22,000kWhです。消費先別にみてみると、厨房機器が43%で最多、次に照明31%、空調は18%で3番目となっています。
暑くも寒くもない中間期の11月では、ひと月に使った量が約19,000kWhです。消費先別にみてみると、厨房機器が50%、照明が34%、空調と換気がともに8%ずつとなっています。
この2つのデータを比較しても、冬は夏よりは減るものの、空調設備に多くのエネルギーが必要となることがわかります。
飲食業を経営していく上で重要な節電
電気代は、毎月必ずかかる経費のひとつです。売り上げに対し、経費を削減することは居酒屋に限らず飲食業を経営する上で重要なポイントとなっています。どれほど売り上げを上げても、経費が多すぎれば儲けが出ることはありません。健全な経営状態にするには、売り上げを上げることはもちろん、経費を削減することが非常に大切なのです。
経費削減のために知っておきたいポイント
経費にはさまざまなものがあります。飲食業では、材料を調達するための食材費やお酒の仕入れ料金なども経費です。しかし、材料費をあまり節約しすぎては、主軸である料理の味が落ちてしまう可能性があります。味や料理の量など、お客様から目に見えてわかる部分をむやみに節約してしまうと売り上げの低下につながります。
しかし、節電はどうでしょうか?空調設備などにかかる電気代を節約しようとして店内を快適にできないのは困ります。しかし、お客様にはわからない部分で、節電の施策を行えば影響はありません。節電して電気代を減らすことは、飲食業の経営状態を良くする上でも、とても有効なのです。
光熱費を削減すれば、「売り上げアップ」と同じ効果になる!
経済産業省の試算をみてみましょう。光熱費が売上の5%を占めている場合、1日の売上25万円のお店では、年間の売り上げが9,000万円になります。売り上げの5%が光熱費ですから、1年間の光熱費は450万円です。
年間光熱費450万円を10%削減した場合はどうなるでしょう。450万円の10%、45万円が利益として残ります。お店の利益率が3%の場合、1年間の売り上げを1,500万円伸ばしたのと同じ効果があるのです。
光熱費を削減するコツとは
飲食店で光熱費を削減するにはどうすればいいのでしょうか?お客様の快適さや居心地には影響させずに節電して光熱費を減らせる「コツ」をご紹介します。
エアコンの節電にはこまめな清掃が有効
夏と冬に多くのエネルギーを使用するエアコンを節電するには、こまめな清掃が有効です。家庭用エアコンでもフィルター清掃をすると使用するエネルギーを少なくすることができますが、業務用エアコンでもそれは同じです。フィルターに溜まったホコリや汚れは、風力が低下する原因になり、同じ室温を保つためにより多くのエネルギーを必要とします。
特に油を多く使って調理を行うお店では、フィルターが汚れるスピードが早く、かなり頻繁に清掃しなくては汚れが溜まってしまうのです。
業務用エアコンを製作・販売している日立アプライアンス株式会社によれば、フィルター清掃をするだけで、1年間掃除しなかった状態に比べて約10%、消費エネルギーを削減できるという試算があります。
また、フィルター清掃よりも節電効果が高いのが、エアコン内部の清掃です。内部清掃は専門の技術が必要ですが、それだけに消費するエネルギーを少なくする効果も高くなります。ダイキン工業の試算によれば、室内機の熱交換器を清掃した場合、清掃前に比べて消費電力量が27%削減できたというデータもあります。
フィルター清掃は店舗スタッフでも行えるので、特にこまめに行って消費エネルギーを減らしましょう。
照明はエリアごとに管理してこまめに切る
照明は1年間の消費先別で30%を占めています。気温などに関係なく、通年使うものなので、照明のエネルギー使用量を減らすことができれば、季節関係なく節約することができ、節電効果も大きくなります。
照明を節約するなら、店舗のエリアごとに点灯するようにして、必要ない場所の照明は切っておくといいでしょう。例えば営業時間前の仕込みの時間帯や、営業終了後の片付けの時間帯は、調理場など必要な場所の電気だけつけるようにしましょう。また、小上がりや個室など仕切られたエリアはお客様がいない時は電気を消しておく方法も効果的です。
店舗スタッフ全員が照明をこまめに切れるよう、スイッチにどこの部分の照明のものなのかをわかりやすくラベルなどを貼っておくとスムーズに電気のオンオフができます。
冷蔵庫は整理して開いている時間を少なく
年間を通して電気を多く消費する厨房機器の中で、節電に効果的なのが冷蔵庫です。まずは冷蔵庫の中を整理整頓し、何があるのかをわかりやすくしましょう。冷蔵庫は開けておく時間が長ければ長いほど、庫内の温度が上がってエネルギーを多く消費してしまいます。
居酒屋など飲食業のキッチンは、家庭とは違い色々な人が物を出し入れする場所です。冷蔵庫の中の物の置き方にルールを作り、どのスタッフが取り出す時も目的のものをすぐに取り出せるようにすると節電も作業スピードも上がり一石二鳥です。
また、冷蔵庫のパッキンが劣化していると、冷気を中に閉じ込めておくことができなくなり消費するエネルギーが増えます。パッキンが1㎝欠損した場合、冷蔵庫は約17%、冷凍庫では約27%もエネルギーが余計にかかってしまうのです。パッキンはこまめにチェックし、劣化に気付いたときは早めに交換しましょう。
電力の使用量が目に見えると節電に繋がる
さまざまなスタッフが働く店舗では、全員が同じように節電を意識して行動しなければ効果がでません。「節電しよう!」と言葉で言うだけではなく従業員の意識が高くなる節電の方法を考えていきましょう。
スタッフ全員の意識を変えるのに効果的な方法は、使った電力量を目で見てわかるようにする「見える化」です。いま現在、どれくらいの電気を使っているのか、節電するために行った方法はどれくらい効果が出ているのかを、目で見てわかるようにします。
すると、スタッフ全員が節電に対して意識して行動することができるようになるのです。
節電効果を見えるようにするには、グラフを作成することがオススメです。今年の電気代と昨年の同じ月の電気代を比較できるようにグラフを作成します。前年と比べることで、節電に向けての取り組みがどれくらいの効果がでているかを実感できるので、より意識を高めることができるのです。
スタッフルームなど従業員の目につきやすいところに結果を掲示するなどして、従業員全員の節電意識を高めていきましょう。
毎月の電気代と1日の電力を見直そう!
経費削減を目的にするなら、電気事業者との契約を見直すことも有効です。電力の自由化により、エネルギーを必要とする時間帯や使った量に合わせたさまざまな料金プランが増えてきています。飲食業とひと言でいっても、営業時間帯や使う電気の量によって適したプランは異なります。
まずは自分のお店の電気料金プランを見直してみましょう。
特にオススメなのが、自由化によって新しく参入してきた小売電気事業者に乗り換えることです。
発電を行う電力会社からエネルギーを調達して供給を行う業者で、多くの料金プランを用意しています。
電気代がどれだけ安くなるのかシミュレーションをしてみましょう
月々の電気代がどれほど節約できるのか知りたい方は、現在の契約内容や料金をもとに、シミュレーションを行ってみましょう。電力会社のWEBサイトでは、現在の電気代などを入力するだけで最適な料金プランを提案してくれます。
料金シミュレーションを行う際は、2017年1月以降に届いた検針票を用意しておくとスムーズです。利用する電力会社や契約種別などを入力すると、その人に合わせた料金プランが表示されます。
小売電気事業者と契約しても、電気の品質には変わりはありません。また、特別な工事などはほとんど必要なく、申し込みをするだけで利用が可能になります。
シミュレーションは無料なので、ぜひ一度チェックしてみてください。
おわりに
電気代を減らすことは、居酒屋などの飲食業を経営する上で大きな経費削減につながります。
また、電気の消費量を減らすだけでなく、電力会社との契約を見直すことも電気料金を減らすことに効果的です。
さまざまな方法を実践して電気代を削減して、健全な飲食業経営を目指していきましょう。
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