良いビジネスモデルを作る5つのステップ!定番パターンと条件を解説
目次
いまさら聞けない!ビジネスモデルとは何か
現在のビジネスシーンには、さまざまなビジネスモデルが存在します。ビジネスモデルの定義やパターンには、どのようなものがあるのか説明します。
ビジネスモデルの定義
ビジネスモデルの定義は、ひとことで表すと「商品やサービスを使ってどのように利益を出すか」です。
ビジネスモデルの世界的権威であるアレックス・オスターワルダー氏は、著書の中で次のように述べています。
出典:「ビジネスモデル・ジェネレーション ビジネスモデル設計書」イヴ・ピニュール共著より
つまり、どのように商品に付加価値をつけるか、ターゲット層をどこに設定するかなどを、論理的に体系化することといえるでしょう。
ビジネスモデルの定義には統一されたものはありませんが、利益を得るためや、円滑なビジネスを進めるためのしくみと考えます。
ビジネスモデルはパターン化が可能
ビジネスモデルは抽象化すると、パターン化が可能になり、何に注力すべきかが見えてくるでしょう。
ビジネスモデルをパターン化すると、以下の3つに集約できます。このようにカテゴライズすることで、ビジネスの勝ちパターンを把握しやすくなるのです。
- 資産をお金に変える
- 商品やサービスを取引して差益を生む
- 集客して手数料を得る
資産をお金に変える
資産をお金に変えるパターンには、その資産が「目減りしない」ということが条件となります。資産とはプログラムやシステム、ライセンスや特許などが挙げられます。
このビジネスモデルは、模倣性や換金率維持、コストやブランド力などがポイントです。ブランド化によって資産価値を高めることが、収益を上げるうえでは大切な点です。
他社追従を許さずに、シェアをつかむためには、ブランド力は重要です。競争によって、競合他社からの模倣が見込まれるため、模倣のしにくさを追求することがブランド化の第一歩といえます。ブランド化によって資産価値を高めることは、換金率の維持に繋がり、ビジネスとしての成功率が上がるといえるでしょう。
商品やサービスを取引して差益を生む
商品やサービスの取引によるビジネスモデルは、商品を見つけ出すことと、購入者を見つけ出すことの両方が必要となります。具体例としては、飲食・小売業界、エネルギーや資源の業界などが当たります。
仕入れた商品をそのまま販売するだけではなく、自社で加工することもあるでしょう。食材加工など例にとれば、大きく仕入れて、購入者が使いやすいように単位を小さくして加工します。それによって利便性が向上し、単価の向上も見込めるでしょう。
このビジネスモデルのポイントは、何をどこから仕入れ、どのように付加価値をつけ、誰に売るのかにつきます。市場やニーズを見つけて、いかに早く市場を独占するかも重要になるでしょう。
集客して手数料を得る
手数料を得るビジネスモデルは、広告を出して集客しマネタイズするものです。マネタイズとは収益化のことで、広告業界や比較サイトなどがこれに該当します。モノやサービスを取引して差益を生むところは、他のパターンと似ていますが、間接的なマネタイズであることが大きな差です。
ターゲットをどこに設定して、どのように集客をするか、どのように効率的に換金するかがポイントとなります。具体例でいえば、「人材」を取引する人材業界や、「Google」や「Facebook」などのSNSもこれにあたります。
このモデルの特徴は、誰を集めるのかターゲットを選定し、新規顧客の獲得を追求することです。その一方で、既存顧客の維持も並行しておこない、いかに効率よくマネタイズを狙うかを検討します。
ビジネスモデルを構築する5つのメリット
ビジネスモデルとは、企業価値を高める仕組みでもあります。ビジネスモデルを構築するメリットには、以下のものがあります。
- 事業への理解が深まる
- 事業内容について話題の共有がしやすい
- 課題を見つけやすい
- 事業の原点に立ち返る
- 再現性が高い
事業への理解が深まる
ビジネスモデルを考えるにあたり、事業の分析は必須となります。分析によって事業の全体像が可視化できれば、直感的に全体を理解することが可能になるでしょう。自社の事業への理解を十分に持てると、競合他社との比較をすることで、自社の立ち位置が容易に把握できます。それが事業そのものを総合的に理解することにつながるのです。
事業内容について話題の共有がしやすい
事業の強みを最大限発揮するには、ビジネスモデルのスタイルを、関係するスタッフと共有することが必要になります。ビジネスモデルのスタイルが共有できると、理想のモデルを関係者間で議論したり、意見交換しやすくなったりします。
ビジネスモデルを構築するということは、収益の構造を体系化するということです。つまり収益の構造に抜けがないか、問題点がないかあぶりだす作業にもなります。関係者間で共有ができている場合には、問題点の議論が活発になり、モデルの精度を高めることが可能になります。
課題を見つけやすい
ビジネスモデルの作成とは、「価値」を「収益」につなげるための設計図を構築する作業です。モデルを構築していく過程をたどることにより、現在の事業のどこに問題点があるのかが見つけやすくなり、対処も容易になります。また他のモデルと比較することでも、問題点を見つけやすく、軌道修正をおこなうタイミングも増えるはずです。
事業の原点に立ち返る
ビジネスモデルを何度も構築し直して実践を繰り返すことは、強い企業文化を構築することにもつながります。初期に構築したモデルを保存して比較検討すると、どれだけ精度が増したのかが実感できるでしょう。事業の原点に立ち返り、初期モデルを基点とすることで、より強固な再構築が可能になります。
再現性が高い
ビジネスモデルを構築することで、ビジネスが「しくみ化」されます。そのしくみを使うことで、いつ、誰が取り組んでも同じ結果が出せるため、再現性が高くなります。利益を生み出せる骨太のしくみを構築すれば、人や場所が変わっても再現できるため、効率的に事業運営ができるのです。
良いビジネスモデルを作るための5ステップ
ビジネスモデルを作るための5つのステップを紹介します。ビジネスモデルの定番パターンを理解した上でステップにのっとり、よいモデルを構築しましょう。
1.既存のビジネスモデルの成功事例を収集
既存のビジネスモデルの成功事例には、事業の成功のヒントが詰まっています。その事例を収集し、サンプルとして分析することで、モデルの構築に役立てます。
なるべく他社の成功事例を数多く集めることが、その後の事業展開や分析に大きなヒントとなることでしょう。
2.集めたビジネスモデルの分析
収集したビジネスモデルを、先述した定番パターンに当てはめて分析します。どのパターンのモデルに分類できるかを把握して、なぜそのパターンなのかを検討しましょう。
業界内でどんなビジネスモデルが多く採用されているのかを知ることは、業界の特性をつかんで理解することにつながります。分析によりその業界のスタンダードを知ることは、ビジネスモデルを構築するうえでも役立ちます。
3.分析結果をもとにしたビジネスモデルの作成
ステップ2の分析結果から自社商品の付加価値を活かせそうなモデルを抽出して、ビジネスモデルを作成します。収集と分析によって業界特有のモデルの方向性が見いだせたら、反対に業界で採用頻度の少ないパターンに目を向けてみるのもひとつの方法です。
ここでは実現可能なのか、参入障壁はあるのかなど、可否は考える必要はありません。選択肢として、可能な限り多くのモデルを抽出するのにつとめて、次のステップで検証します。
4.実現可能なビジネスモデルの選定
抽出したビジネスモデルの中から、実現性が高いモデルを選定します。ここで前のステップで触れたように、実現が困難そうなモデルを削り落とす作業をするのです。
自社の資金や技術力を勘案して、問題がある場合の解決策はあるかどうかを判断します。解決策が見つからない場合は、思い切って違うビジネスモデルに方向転換しましょう。複数の候補の中から、一番実現が可能なモデルの選定をおこないます。
5.ビジネスモデルの実践と振り返り
ここまでくれば、選定したビジネスモデルを実践し、分析と同様の結果が出るかを検証します。予測に近い結果が出たのであれば、モデルの確立は成功といえるでしょう。
予想に反して、思ったほどモデルが確立できていない場合は、振り返って問題点を抽出してみましょう。解決策が出てくれば、ビジネスモデルの軌道修正をおこない、一定期間後に再び振り返ります。何度か繰り返すうちに、モデルが徐々に洗練されていくでしょう。
ビジネスモデル構築に応用できるフレームワーク
ビジネスモデル構築のためには、フレームワークの活用が有効です。どのようなフレームワークを使うとよいのかをまとめました。
BMC
BMC(ビジネスモデル・キャンバス)とは、ビジネスモデルにおける代表的なフレームワークです。9つの要素で、事業の全体を可視化することができます。
オペレーションの領域 | マーケティングの領域 | |||||||||||||||
主要パートナー | 主要活動 | 提供価値 | 顧客との関係 | 顧客セグメント | ||||||||||||
主要リソース | 販路 | |||||||||||||||
コスト構造 | 収入の流れ | |||||||||||||||
ファイナンス・P/Lの領域 |
このフレームワークは、表の項目を埋めていくだけで、自社のビジネスモデルを客観的に見られるのがメリットです。作成の時間も短縮でき、関係者間の理解や共有が簡単なのも特徴です。
9フレームワーク
3×3の9マスに質問を入れて、それに答えていくことで、ビジネスモデルが論理的に可視化されていくのが9フレームワークです。それぞれのマスの答えを埋めていくと、誰にどんなサービスをどのように提供するか、どうやって利益が生み出されるかが理論的に明確になります。
Who(誰) | What(何) | How(どのように) | |
---|---|---|---|
顧客価値 | 顧客は誰か | 何を提供する | どう実現するか |
利益 | 誰から儲けるか | 何で儲けるか | どう儲けるか |
プロセス | 誰と組むのか | 役割分担は何か | どの流れか |
9フレームワークのメリットは、手順がシンプルでわかりやすいところです。シンプルな質問で、ビジネスに必要な要素をすべて導き出せる点が優れています。新しい分野の市場にゼロから進出する場合は、9フレームワークを活用するとよいでしょう。
「良いビジネスモデル」の3つの条件
ビジネスモデルとは、事業で利益を生み出すしくみを指します。事業を成立させるために必要な「良いビジネスモデル」の条件を、3つに絞ってみました。
1.継続可能性
儲けのしくみを作り上げて、収益を確立するビジネスを継続的に展開することが「継続性」です。新ビジネスを事業として継続していけるかどうかは、重要な条件です。どんなに魅力的な商品開発をしても、収益が上げられずに事業継続が難しくなっては意味がありません。
2.模倣困難性
競合他社に真似ができないようなオリジナリティを持つことが「模倣困難性」です。その会社だからこそできる技術やしくみで、競合他社の追従を許さない事業が理想的です。
3.提供価値
「提供価値」は、ビジネスモデルにおいて重要な要素です。前述のBMCで示した図では、提供価値は中央に位置し、他の要素と関係性が深いといえます。
提供価値とは、顧客に対して「何を」提供するのかを考えることです。顧客が欲する価値は何か、価格の安さなのか、あるいは品質の高い商品なのかを見極めることです。
提供価値を大きく分けると、ふたつの方向性が見えてきます。ひとつは「喜びを与える」ことで、低価格で高品質などの商品があれば、顧客の喜びにつながります。もうひとつは「痛みを取り除くこと」で、パフォーマンスを改善して効率化するツールなどが該当するでしょう。
相対的なものである価値を最大化させるには、価値が顧客に対して「有益な、便利な、今までにない、素晴らしい」体験になるように考えることが必要です。他社と差別化した、ちょっとでも違う価値が提供できるかどうか、それが価値の最大化といえるでしょう。
ビジネスモデルの成功事例3選
ユニクロ
ユニクロはいまや、世界中に店舗をかまえる人気ブランドとなっていますが、ECサイトの活用でビジネスを拡大させた成功事例です。実店舗では販売していない特別なサイズを、ECサイト限定で展開するという価値付けをおこなっています。
通販とアパレルは相性があまりよくないものですが、ユニクロでは各商品のページにレビューを表示して、第三者のリアルな声を伝えています。またクーポンの配布をアプリ上で積極的におこない、実店舗で受け取れば送料無料として、アプリ経由での購入を後押ししているのです。ECサイトが好調なことによって、総合的にユニクロ全体の売り上げを押し上げているといえるでしょう。
メルカリ
メルカリのビジネスモデルは、物を売りたい人と買いたい人を、オンラインプラットフォームでつなげる手数料ビジネスです。サービスの利用そのものは無料で、取引が成立した時のみ販売手数料が発生するしくみです。
出品者側には、自宅にいながら出品でき、匿名で取引できるメリットがあります。料金の未払いや商品未発送などのトラブルを防ぐこともできるため、手軽に利用できるサービスとして人気があります。
Googleは広告形式のビジネスモデルとして、ユーザーの利便性を追求して成功した企業です。広告主から収益を得ることで、さまざまなサービスを無償でユーザーに提供しています。
Googleは収益の83%を広告事業が占めており、世界で一番の検索エンジンを持っていることから、非常に安定した収益基盤を持っています。近年では「YouTube」の広告も急成長を見せているため、今後も安定的な収益が期待できるでしょう。
これからのビジネスモデルはDX・UXの観点が必須!
今後のビジネスモデルとして注目すべきは、DXやUXの観点です。DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)を示し、IT活用による変革で、生活をよりよく変化させるという意味を持ちます。
DXを定義するなら、データやデジタル技術を活用してビジネスモデルを立案することといえるでしょう。企業が激しい市場の変化に対応して勝ち抜いていくために、顧客のニーズをもとに製品を開発していくことも含まれます。最終的には競争力の維持や強化を果たすことにつながります。
つまりDXとは、業務プロセスをデジタル化やIT化するだけにとどまらず、デジタル技術の活用でビジネスモデルや企業文化を、根本から改革することを示しているのです。
UXとはユーザーエクスペリエンスを示し、ユーザーがサービスを利用することで得られる体験のことを指します。ユーザーの体験を通して、さらなるサービスの向上とユーザー満足度の向上をめざすものです。
これからのビジネスモデルには、DXやUXの観点は必須になっていくでしょう。変化しやすい消費者ニーズに対応していくためには、顧客データや販売実績データの分析に基づいて、DXを活用したマーケティングが重要です。
どんなに素晴らしい商品やサービスを生み出しても、それだけでは事業は成り立ちません。UXの視点を取り入れて、ユーザーにより良い体験を与えることで、他社との差別化をはかれることになるのです。
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