経産省が大手電力会社に営業規制 価格競争促進へ
目次
電力自由化が進められ、消費者が契約する電力会社を選べるようになった現在、新たな問題が発生しているようです。
経済産業省が、大手電力会社10社(北海道電力、東北電力、東京電力HD、中部電力、北陸電力、関西電力、中国電力、四国電力、九州電力、沖縄電力)による、顧客の不当な囲い込みの規制に乗り出しました。
今回問題として取り上げられたのは、契約切り替えの情報を利用し、安い料金プランを提示して引き留める「取り戻し営業」。電気事業法における情報の「目的外利用」となり、「顧客情報が営業部門に流れること自体あり得ない」といわれています。
電力自由化の流れ
電力自由化以前、電力会社を選択することができなかった消費者は、例外なく大手電力会社10社のいずれかと契約していました。つまり、電気の販売に関しては、この10社が独占していた形になります。
電力の自由化は、資源エネルギー庁により慎重かつ周到に、段階を踏んで行われてきました。
1995年の電気事業法改正を皮切りに段階を経て2003年、特別高圧区分となる大規模工場やデパート、オフィスビルを対象に小売自由化。この時点では、まだ一般家庭は対象となっていなかったものの、「新電力」と呼ばれる新規参入電力会社から、電気を購入することが可能になりました。
その後自由化の領域は中小工場・ビルへと拡大していき、2016年に全面自由化となったのです。
大手電力会社の囲い込み
電力自由化が始まった直後、2017年3月機の連結決算では、大手電力会社10社の内、九州電力と沖縄電力以外の8社が2桁の減益となりました。電力自由化の影響が如実に現れたといえるでしょう。
こうした中、大手電気会社が企業や家庭が契約を切り替えようとする情報を利用して、安い料金プランを提示して引き留める「取り戻し営業」が問題になりました。
電気会社の切り替えを考えている顧客の情報が営業に流れていることが、情報の「目的外利用」になるとして、電気事業法上の問題行為に当たるため、年内に指針案の取りまとめを目指す方針です。しかし、大手電力会社はこれに反発。「情報共有はできない仕組みになっているので問題はない」としています。
では、仮に大手電力会社が社内で営業部門と情報を共有していたら、何が問題なのでしょうか。
一般的に、契約切り替えの申し込みを受けた新電力は、顧客の代理として大手電力会社へ契約解除を取り次ぎます。この際、電力広域的運営推進機関(広域機関、東京)のシステムを使うため、大手電力は広域機関から連絡を受けることになります。
この時点で契約は変更されているのですが、機器工事のため新電力が電気の供給を始めるまで、最大で二ヶ月程度の時間がかかります。そのため、契約解除の手続きを行った後も、電気が供給される二ヶ月の間に大手が大幅な割安料金を提示すれば、契約をつなぎとめることが可能なのです。
これが、電気事業法上の問題行為となる、情報の目的外利用になります。
電気事業法とは
問題となる電気事業法とは、電気事業および電気工作物について定められた法律で、極簡単に説明すれば電気に関する法律です。
電気事業のあり方やその活動を規制するための基本的な法律で、「電気用品安全法」「電気工事士法」「電気工事業の業務の適正化に関する法律」と合わせて、電気保安4法と呼ばれています。
電気事業法は、電力自由化に伴い段階的に改正されており、第3弾まで行われました。
健全な競争促進に向けて
電力自由化は、電力事業のコストや諸外国との料金格差などの問題から、自由な競争を求めて段階を踏んで行われてきました。それが今回、大手電力会社の「取り戻し営業」により阻害された形となります。
経済産業省は、「他社が知り得ない情報に基づく営業行為は健全な電力事業の進展に影響を及ぼす」として、年内に新たな規制をかける方針です。
大手電力会社と新電力の健全な競争のためには、こうした問題を一つひとつ解決していかなければなりません。
2020年までに完了が見込まれている電力の完全自由化のために、大手電力会社はもちろん新電力にも公正な手段で競争してほしいものです。
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