キャラクターパンは著作権法違反になる?
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老若男女関係なく、パンは多くの人に愛されています。中にはパンを買って食べるだけでなく自分で作り、多くの人に食べてもらいたいと考える人もいるでしょう。趣味として作り、知り合いや友達や会社の人たちに振る舞うだけでなく、パン屋の開業を夢見る人もいるのではないでしょうか?
すでに具体的な話も進み、お店の場所どんなパンを売り出すか決定したばかりの人もいるかもしれません。ただし、気をつけたいのがキャラクターパンの扱いです。アニメやマンガのキャラクターを模したパンは子どもたちに受けます。しかし、著作権が存在していることを忘れてはいけません。「パンなのに著作権なんて関係するわけない」と思った人は注意してください。本格的にパン屋をスタートする前に、キャラクターパンと著作権のことを知っておきましょう。
キャラパンの販売は著作権法違反
著作権法には以下のような記述があります。
(私的使用のための複製)
第三十条 著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とする時は、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
引用:著作権法第二章第三節権利の内容 第五款 著作権の制限
キャラクターパンは、著作権法で私的使用に限り使用が認められています。私的使用とは、家でキャラクターパンを作り、自分が食べたり、家族、友達や知り合いに振る舞う程度のことです。
では、キャラクターパンを複製し、お店で売るのは私的使用と言えるでしょうか?答えはNOです。公表されたキャラクターには著作権があります。食べ物に利用するにしても、アニメやマンガを模倣したキャラクターパンなどを作って営利目的で販売をすれば、著作権を侵害していると判断され罰せられるリスクが登場するわけです。
どうして私的使用だと著作物の侵害にあたらないのか?その理由は著作権者の経済的な利益を害するかどうかがポイント。自分で食べたり、人にプレゼントしたりするぐらいなら著作権者の利益を大きく侵害するほどではありません。
著作権法違反の罰則は重い
では、著作権法を侵害したと判断されたらどうなるのでしょうか?著作権法の罰則は甘いものではありません。著作権法違反は、10年以下の懲役、又は1,000万円の罰金が課せられるのです。著作権の侵害では、5年以下の懲役、又は500万円以下の罰金などが定められています。
作ったら人気が出て売れるだろうと目論見、人気キャラクターを勝手に模したパンを作って予想通り売れたとしましょう。しかし著作権を侵害しているとなれば、厳しい罰則を課せられる可能性が生まれます。どんなに売れたとしても、罰則を受ければプラマイゼロどころか、マイナスとなるリスクがあるのです。パン屋をする時、キャラクターパンを売り出すことを考えるなら、著作権法についてはくれぐれも注意しましょう。
じゃあなぜ野放しになっているの?
「著作権法違反をすると懲役や罰金があることは分かった。しかし、あの店もあの店もキャラクターパンを売っている。みんな許可を取っているのか?」と不思議に感じた人もいるかもしれません。
通常、著作権を侵害しないためには著作権を持った人や組織に、許可を取る必要があります。漫画のキャラクターなら、出版社や発行元、作家があげられます。著作者が見つからない場合、公益社団法人著作権情報センターという組織がありますので相談に乗ってもらうことも可能です。
「キャラクターパンを作るだけでみんな本当にそんな手間がかかることをしているのか?」と疑念に感じる人もいるでしょう。ここに著作権法の現実問題があります。実は、著作権は親告罪です。親告罪とは、被害者などが告訴をしなければ検察官が起訴できない犯罪のことです。
つまり、著作権者が告訴しないと法律違反にはなりません。そのことを踏まえ、キャラクターパンを考えてみてください。多くの場合、キャラクターパンの対象となるのは子どもウケする漫画やアニメキャラばかりです。著作権者は告訴するでしょうか?子どもはそのパンで喜んでいるし、著作権の侵害は明白だが、禁止した場合、そのことが世間一般に広がるかもしれない。
そうなると、仮に裁判になって売上の一部を徴収できたとしても器が小さいと叩かれてイメージダウンにつながる可能性もある。――そうです、告訴をしたところでパンの著作権侵害で得られる利益は知れているのです。このように、パン屋が著作権侵害をしていて著作権者が訴えても得られるメリットは少ないのです。このため、見て見ぬふりをして野放し状態になっている現実があります。
2018年12月30日から著作権が非親告罪化する!
「著作権は親告罪だから侵害しても問題ない」と安心するのは早いです。あまり話題になっていませんが、実は2018年12月30日より、著作権は親告罪から非親告罪化となることが決定しました。
TPP関連法案に含まれる形で2016年第190回国会へ提出されたのです。言語や音楽、図形、美術まで、あらゆる著作物が非親告罪になりました。目的は国際的な問題にもなっている海賊版の廃止のため。そのため、個人で細々とやっているパン屋のキャラクターパンが検察に狙われて著作権侵害となり、告訴される可能性は少ないという話もあります。
しかし、その気になれば著作者や検察がすぐに告訴できる状況となるのです。つまりこれまでのように「キャラクターの名前を少し変えれば大丈夫、見た目は似ているが違うもの」という言い訳は通用しません。
例えば、音楽業界で起きた記念樹事件が知られています。作曲家の小林亜星氏が服部克久氏を著作権侵害により提訴した事件です。対象は小林亜星氏の『どこまでも行こう』という楽曲と服部克久氏の『記念樹』一審判決では一部似ているところはあるが、全体では同一性があると認められないと小林亜星氏の訴えは棄却されました。しかし、二審では編曲権侵害を中心に争われ、小林亜星氏の勝訴。服部氏上告したものの最高裁判所で不受理となり、記念樹は著作権法違反とされたのです。聞いたことがある方なら分かると思いますが、「ん~言われてみれば似てるかもしれない、でもわからん!」というのが本音です。
このような事例もあるので、パン屋を開業し、無許可でキャラクターパンを売るような行為は控えたほうが良いかもしれません。
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