グループホーム施設向けの電気代削減をする方法
目次
日本は高齢化社会が進み、グループホームや介護施設、老人ホーム、高齢者向け住宅などのさまざまなサービスを提供する施設が増えてきています。特に都心部ではこれらの高齢者向け施設は入居待ちが多く、需要が高い状態が続いています。
しかし、このような事業所の運営には人件費や設備費用に莫大なコストがかかり、中でも電気代は100床以上で1000万円以上かかるといわれています。とはいえ、入居利用料を高く設定すると入居希望者が減ってしまいます。運営費用を極力抑えて利用料を安く提供するためには、電気代の削減が重要なポイントとなってきます。
それではグループホームなどの施設の電気代を節約するには一体どうしたらよいのでしょうか。
介護施設の電気代を節約するには?
介護施設等の電気代の節約には、「電力プランの見直し」「基本料金の見直し」「設備の見直し」の3つが重要となります。
電力プランの見直し
2000年から段階的に始まっている電力自由化により電力会社、契約電力の種類(特別高圧電力・高圧電力・低圧電力)を法人・個人共に自由に選べるようになりました。そして、電力会社毎にそれぞれ特徴を持ったさまざまな電力プランが次々と提供されています。自由化によって、これまで閉鎖されていた電力会社の業界に次々と新規参入する企業が増えているため、電気料金の価格競争が進むことが予想されます。
したがって、携帯電話の企業や料金プランを私たちが自由に選べるように、電気についても電力会社、電力プランを自由に見直せるようになっています。
つまり、これまでは決められた電力会社の決まった電力プランで支払っていた電気代を、運営する高齢者利用の施設に合わせた電力プランに変えることで、電気代を大きく削減できる可能性があります。
基本料金の見直し
実は電気代の基本料金は一律で決定されているわけではなく、その施設や家庭、企業の30分あたりの平均消費量によって算出されています。そしてこの30分あたりの使用量が最も多かった月を基準として基本料金が割り出されます。よって電力消費量を節約して使用量の変動をなくすことが基本料金を抑える方法につながります。
設備の見直し
グループホームなどでは設備にお金がかかることが多く、使っている電化製品などの節電方法を検討してみることも大切です。基本的に古い電化製品は電力の消費量が大きい傾向にあります。日々省エネ対策で開発された製品が登場しているので最新のものに取り換えるということも検討してみてください。
高齢者の健康や安全を考慮した節電の仕方
高齢者向けの施設の節電方法は一般企業や家庭とは異なり、高齢者の健康や安全配慮をして行う必要があります。
体温調節機能が低下している高齢者には
例えば空調の温度設定。高齢者は体の体温調節機能が衰えているため、自分で体の体温が下がっていることや上がっていることに気づかないことがあります。そのため、一律の温度設定は難しく、個人個人に合わせた室内の温度管理が求められます。特に夏の夜間は高齢者の熱中症に気をつけなければなりません。
空調の温度設定で節電対策を図るのではなく、施設内の温度を上げない、あるいは下げない取り組みを行いましょう。例えば夏はヘチマなどでクリーンカーテンをつくり、窓に当たる直射日光を避けます。冬は窓に防寒シートを貼ることで室内が冷えるのを防ぐことができます。
視力が低下している高齢者には
室内や廊下などの照明の明るさについても注意が必要です。視力の低下している高齢者が生活しやすいように、照明は通常より明るく設定されていることが多いと思います。従って明るさを変えるのではなく、照明を蛍光灯からLEDに交換することをお勧めします。LED照明は電力消費が低く、電気代を抑えることができます。さらにLED照明は端まで明るいので部屋を効率良く明るくしてくれます。
高齢者に直接関係のない所の節電対策
グループホームなどのスタッフの事務室は、高齢者が利用するスペースではありません。照明はこまめに消して、エアコンの温度設定も夏は28度、冬は20度に設定しましょう。
また、給湯器も非常に電気消費量の多い設備です。給湯器の温度設定を1度変えるだけでも電気代に影響します。パネルをこまめに切ることも大切です。
会社や家庭とは違ったところに電気代がかかる事も
一般企業や家庭ではグループホームなどのように24時間電気をつけっぱなしということは珍しいですよね。更に介護施設ではコンビニエンスストアなどとは異なり、1日の間で電気の使用量が大きく変動します。前述した通り、電気代の基本料金は最大電気消費量から算出されるため、使用量に差があると基本料金は高くなる仕組みになっています。従って介護施設の電気代は必然的に高くなってしまいます。
そこで注目されているのが「電子ブレーカーの導入」です。
電力の基本料金は「負荷設備契約」と「主開閉器契約」のどちらかの契約に基づいて決められます。多くの事業所は「負荷設備契約」を結んでおり、モーターの容量から基本料金につながるデータを集めています。一方、「主開閉器契約」ではメインブレーカーの容量のデータから基本料金を算出します。
つまり契約を「主開閉器契約」に変更して基本料金の削減のために開発された電子ブレーカーを導入することで基本料金を抑えることができるのです。ただし、電子ブレーカーを導入できるのは低圧電力を使っている場合のみです。高圧電力を利用している施設では節電効果は期待できませんので注意が必要です。
介護施設向けの電力使用プランとは?
電力自由化により電力プランはニーズに合わせて多様化しています。中には「基本料金がゼロ」という電力会社まで登場しています。ただし基本料金がゼロの場合は電力の単価が高くなってしまうので、電気消費量の多いグループホームなどには向いていません。また、事業内容によって最適な電力プランは異なります。例えば工場の場合は平日の昼間に電気料金がかさみますが、商業施設などは週末の昼間に電気料金が高くなる傾向にあります。電力会社が提供するプランも事業内容に合ったものがそれぞれ用意されています。
低圧電力を使用している介護施設
低圧電力を提供する法人用の電力使用プランでは、消費量の範囲によって電力単価が変わるプランや、時間帯によって単価が大きく変わるプランなどがあります。
グループホームなどの場合は季節毎で料金単価が変わるプラン、そして電力負荷率割引のあるプランが向いているといえます。
高圧電力・特別高圧電力を使用している介護施設
施設の規模にもよりますが、新電力企業の電力プランを検討してみてください。新電力企業が提供するのは高圧電力あるいは特別高圧電力です。価格だけではなく、安定した電力提供が可能かどうかを確認することが最も大切です。特に介護施設の場合、入居者の命を預かっています。停電など短時間であっても命の危険を及ぼすことがあるので何よりも安定供給を重視するようにしましょう。
また、節電コンサルティングサービスを併せて提供してくれるような企業も存在します。
運営する高齢者向け施設の全体の電力消費量、1日の中での変動、さらに曜日や季節による変動を考慮して最適なプランを選ぶようにしましょう。そして料金プランはこまめに見直すことが大切です。
エアコンを使用する時間が長い施設
エアコンは電気代の中でも特に高いウェイトを占めているのではないでしょうか。
高齢者向け施設では特に一年中空調を作動させていることも多いと思います。そこで高齢者施設向けのエアコンの電気代を節約する方法をご紹介します。
エアコンと一緒に扇風機を併用する
エアコンの風がなるべく循環するよう、扇風機やサーキュレーターを用いて効率よく風を室内に行き渡らせましょう。
2週間に1回、エアコンのフィルターを掃除する
エアコンのフィルターに汚れが溜まると本体の性能が低下してしまい、電気代も余分にかかってしまいます。また、汚れたフィルターで風を送ることは高齢者の呼吸器にもよくありません。2週間に1回程度を目安に、こまめに掃除しましょう。
経済産業省の「一般飲食店における省エネルギー実施要領」では、1年間エアコンのフィルターを掃除していない場合には、エアコンの電気代が「年間約10%もアップする」と紹介されています。また、同資料では古いものと新しいもので電気代が40%もの差になると解説しています。1995年と2007年の製品の比較ですので、最新の空調機器はこれよりも更に節電効果が高く、電力消費量が少ないといえます。
参考:経済産業省 「一般飲食店における省エネルギー実施要領」
http://www.meti.go.jp/setsuden/press/20080331014/03_2_inshoku_shoene.pdf
室外機の周りに余計な物を置かない
室外機にも注意が必要です。室外機の周りに物を置いてしまうと風の流れが悪くなり空調の効率が低下してしまいます。室外機の周りはきれいに、何かで遮断されることのないように気をつけましょう。また、室外機に直接日光が当たらないようにすることも大切です。熱がこもると冷却効率が低下します。特に夏は日陰に置くあるいは太陽を遮る工夫をしましょう。
一括管理システムを導入して無駄を探す
施設全体の空調をパソコンで一括管理してデータを計測・分析するという方法があります。そうすることで、どの場所がどれだけの電気を消費しているかを把握できる上、無駄な場所を発見しやすくなります。システムの導入にお金がかかりますが長期的な節電対策を望むのであれば検討する価値はあるのではないでしょうか。また空調だけでなく、照明の管理も同時にできます。
電気代の削減は最も重要
介護施設を運営する上で、最も経費がかかるのが人件費。「それなら人件費を削除すればいい」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、人件費を抑えるということはサービスの低下に直結します。サービスが低下してしまうと入居者の満足度が下がり、入居率が低下して経営がさらに悪化してしまいます。
電気代は人件費ほどの運営コストを占めていないものの、グループホームなどは莫大な電気代を毎月支払っています。電気代の節約は、上手く行えばサービスを低下することなく実施することができます。その上、地球環境の保護にもつながります。
電力の設定が高い施設向けの電力プランとは?
前述した通り、電力の自由化によって電力の種類を選べるようになりました。これまでは利用が限られていた高圧電力ですが、施設の電気消費量が50kwを越える場合は低圧電力から高圧電力への切り替えができるようになったのです。
従って電力の設定が高いグループホームなどは高圧電力への切り替えを検討してみるのも、電気代の節約につながることが期待できます。しかし、高圧電力へ変えたからといって必ずコストダウンになるわけではありません。
それでは高圧電力に切り替えるかどうか何を基準に判断したらよいのでしょうか。
それは「電力負荷率」です。電力負荷率は以下の計算式で算出されます。
・電力負荷率=【実際に使用した平均電力量÷最大電力量】×100
「電力負荷率が高い」ということは1日の電力の消費量の変動が少なく効率的に電気を使っていることになります。電力会社は、なるべく一定の出力で稼働する方が効率よく、電力単価を抑えることができます。つまり、電力負荷率が高い顧客には安く電力を提供できるのです。
高圧電力に切り替えて電気代を抑えられる損益分岐点は「電力負荷率が30%」といわれています。現在電力負荷率が30%以下であれば、低圧電力のまま、30%を超えているのであれば高圧電力への検討をおすすめします。
高圧電力に実際に切り替えた事例で、年間1000万円以上支払っていた大型病院の電気代を数百万円削減することができたというケースがあります。電気代を年間で1割以上削減できたら経営コストは大幅に改善されるでしょう。
まとめ
グループホームなどの電気代を削減するさまざまな方法をご紹介してきました。
どこから手を付けていいかお悩みの方は、はじめに述べた通り「電力プランの見直し」「基本料金の見直し」「設備の見直し」をしてみましょう。
そして電力プランの見直しや設備の見直し、節電に対する取り組みを推奨することで、電気代の削減をめざしましょう。
グループホームの電気代の節約は、施設の特性を踏まえた上で適切な対応をとることが必要不可欠です。
無理なくコストカットするためにも、是非多角的に見直しをしてみてくださいね。
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